公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

季節の花(東京都薬用植物園)

ナンバンギセル

(ハマウツボ科)

 

撮影日 2022-08-23

植物のある場所 ロックガーデン

煙管(きせる)で喫煙する人も近年とみに減りましたが、この植物の姿が煙管の語を現代に伝えています。別名のオモイグサ(思い草)は、うつむき加減の花が、思索にふける人の姿に見えることによります。
寄生性の1年草で、地上茎はほとんど無く、葉も微小な鱗片状でほとんど判りません。立ち上がった茎に見える部分は花柄で、淡黄褐色に赤紫色の縞模様(模様の出ない個体もある)、花冠は5浅裂で赤紫色、おしべは4本です。
植物体のどこにも緑色の部分がなく、葉緑素をもたない全寄生植物であることが外見からも伺えます。
晩秋には蒴果が黒っぽく熟し、黄褐色の粉のような微細な種子を大量に散布します。
日本ではススキに寄生する場面がもっとも普通にみられるものの、単子葉植物であればかなり広範に寄生する能力があって、ヤマノイモ科のオニドコロに寄生して咲いた事例も、当園で確認しています。
いっぽう熱帯ではサトウキビやショウガ科植物に大量に寄生してそれらの収穫量を落とすため、害草と見なされています。

ハマウツボ科には寄生植物が数多く知られています。日本薬局方の採用する新エングラー体系ではゴマノハグサ科とされてきたうちの半寄生性のグループ(シオガマギク属、ママコナ属、クチナシグサ属、ヒキヨモギ属ほか)など多数の種が、APG体系ではハマウツボ科へと再分類されました。
このため新しい分類体系によれば、世界に2,000種以上を擁する大きなグループに位置づけられ、その大半が半寄生もしくは全寄生植物です。
興味深いことに、APG体系・第IV版では、生薬ジオウ(地黄)の基原植物として重要な薬用植物であるジオウ属も、ハマウツボ科にまとめられました。なおジオウ属はハマウツボ科としては例外的な、寄生生活をしない完全な独立栄養植物です。
【別名】オモイグサ
【分布】北海道〜南西諸島、東南アジア(台湾、マレーシア、インド方面)

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