林内に生える常緑低木で、自然分布は茨城県以南とされます。東北地方にも分布しますが、植栽からの逸出とみられます。葉の切れ込み方から、漢字で「八つ手」と表記されるものの、実際の葉の裂片数は奇数である5, 7, 9, 11となる場合がほとんどです。
属名 Fatsia （ファツィア）は、日本語の「はち（八）」に由来するとされます。
有毒なサポニンを含んでおり、トイレの水洗化以前は、本種の葉を便槽に入れ、蛆虫の発生を抑制する用途がありました。耐陰性も強く、しばしば家屋の裏手、便所の近くに植えられているのも、そういった経緯からと思われます。
花は晩秋から初冬にかけて、球形をした散形花序をつけます。おしべ先熟で、開花当初は雄性期、その後は雌性期へと移行することにより、自家受粉をなるべく回避する仕組みを備えています。花弁は目立たず、雌性期になると概ね落ちてしまいます。
地味めな花ではありますが、他に花の少ない時期に開花し、豊富な花蜜を分泌することから、昆虫たちには人気があり、多数のハナアブ類やハエ類、またアリなども訪花します。