公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

季節の花(東京都薬用植物園)

カワラヨモギ

(キク科)

 

撮影日 2023-09-29

植物のある場所 漢方薬原料植物区

河原や海岸に生育する、半常緑の多年草、ないし茎の下部が木質化する亜低木です。通常、河原のものは斜上~直立して高さ40-150cmほど、海岸のものはそれよりも低く、やや匍匐性を示します。
葉はコスモスのように細く裂けます。越冬時の葉は裂片がやや幅広で、白い短毛に密に覆われて青白く、春から夏の葉は裂片が糸状で、光沢のある緑色を呈します。
初秋に分枝する花茎を立て、おびただしい数の頭花をつけます。個々の頭花は直径・長さとも1.5-2mm程度で、黄緑色ないし淡褐色です。
キク科といえば秋を彩るキクをはじめ、ダリア、ヒマワリなど美麗な花をもつ属が多い中、ヨモギ属の花はきわめて地味です。虫媒花として進化したキク科の中にあって、ヨモギ属は昆虫の少ない乾燥地や荒地に適応して、再び風媒花の道を歩んだ仲間として知られます(高山性のヨモギ属には虫媒花もある)。
東京都におけるカワラヨモギは、多摩川流域に点々と自生地が知られるものの、近年頻発する異常な流量の河川氾濫や、河原の富栄養化によって他の植物との競合に負けるなどで個体数が少なく、東京都レッドデータブック(2020本土部)においては「VU」(絶滅危惧II類相当)に指定されています。
頭花を生薬インチンコウとして用いるほか、頭花抽出物がミカン類の収穫後鮮度保持剤(防腐・防カビ効果のある食品添加物)の材料として使われています。
【生薬名】インチンコウ(茵蔯蒿・茵陳蒿)
【薬用部分】頭花
【用途】漢方処方用薬:利胆・消炎作用(茵蔯五苓散ほか)
【成分】クマリン誘導体(エスクレチンほか)、精油など
【分布】本州~沖縄、朝鮮半島、ウスリー地方ほか

新常用和漢薬集「インチンコウ」

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