公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

薬用動植物国内栽培事業

新潟県新発田市 Shibata City

新発田市は新潟県の北部に位置し、越後平野の穀倉地帯から飯豊山系へ及ぶ広大な市域を有します。
新発田市とは2014(平成26)年3月に連携協定を締結し、市の南西部に位置する松岡地区に約90アールの圃場を設けて薬用植物を栽培しています。 圃場にほど近い山林には、薬用となるクロモジが豊富に生育しており、これも保全しながら出荷へと繋げています。

 

新発田市における栽培品目

シャクヤク、トウキ、クロモジ、ホソバオケラ
太字は出荷実績、あるいは出荷段階にある品目)

 

ていねいな基礎研究を安定生産へ繋げる

薬用植物の生産は、実学の側面が強い事業です。薬用植物の栽培ごよみは野菜などのように確立しておらず、その地域の気候や土壌条件などで変化するため、必ずしも既存の手順書のセオリー通りには進まないことがあります。 そのため、各地域に即した最適解へたどり着くには、実際に条件を変えての試験・比較が必須となります。


山あいの松岡地区圃場


トウキ栽培状況

新発田市では、シャクヤクの品種・系統ごとの生育や病気発生率の比較、トウキの育苗方法・定植時期による生育や抽苔(トウ立ち)率の差など、各種条件での比較検討をていねいに継続しています。これまでの6年以上におよぶデータの蓄積で、安定的・継続的な生産への礎となっており、継続的な出荷先を確保できていることの原動力にもなっていると言えます。
さらに、多彩なシャクヤク園芸品種の中には薬用としての適性を兼ね備えた品種もあることから、新発田市における適用の可能性を見出すべく、約10アールの圃場で試験栽培を重ねており、さらなる最適解へのアプローチを今なお継続しています。


シャクヤク品種「梵天」
(新発田市農林水産課提供)


シャクヤク品種比較栽培
(秋季のため地上部整理中)

また新発田市では、市が実証事業を担当し、生産実務は任意団体「松岡薬草生産組合」を組織して担当する分担体制が特色です。 組合の形を取ることで、設備の共同管理やマンパワーの安定化が可能となり、継続出荷及び品質の安定・均一化のためには有効な体制と考えられます。

 

地域環境を活かす薬木の生産

松岡地区は平野部と山間部の接点にあたり、付近には山地性の薬用植物も自然分布しています。 たとえば落葉低木のクロモジは、生薬名をウショウ(烏樟)と称し、身近なところでは薬酒などに用いられます。
新発田市には、クロモジの中でも日本海側に分布し香り高い変種オオバクロモジを豊富に産する山があります。 出荷できるのは、香りや薬効の元となる精油成分に富む細めの若枝です。しかし収穫時には太い部位も混ざりますので、それは適当な大きさに割り、クロモジの香りを楽しむ入浴剤として、無駄なく活用されています。


保全される自生のオオバクロモジ


収穫したクロモジの枝
(新発田市農林水産課提供)

クロモジが生える面積はかなり広大ですが、道路から遠いと搬出が困難であり、経済的に収穫・出荷できるエリアは限られます。クロモジは萌芽力が強く、収穫後数年で再び収穫可能な大きさに育つので、計画的に収穫→育成のローテーションを行うことで持続的な出荷につなげています。 自然の植物資源を保全しながらの利活用事例として今後も注目されます。

 

新発田市が描く、薬用植物の未来

薬用作物は栽培期間の長いものが多く、毎年安定した量の継続出荷及び品質の安定・統一が販路の確保に大切と言われます。新発田市ではこれまでの取り組みが形となって、販路が確保されつつあります。 松岡地区をモデルとして、薬草といえば新発田市!を目指して事業を推進する新発田市の取り組みは、今後も注目です。

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