公益社団法人東京生薬協会公益社団法人東京生薬協会

薬用動植物国内栽培事業

秋田県美郷町 Misato Town

美郷町は秋田県南部の内陸部、大仙市の東に位置し、六郷湧水群をはじめ町内随所に豊富な湧水資源を有する地域です。
美郷町とは2013(平成25)年2月に連携協定を締結し、現在栽培中の品目のうちキキョウについては(株)龍角散への出荷が既に行われています。2019年初には美郷町生薬生産組合が立ち上がり、事業拡大の起動力として機能しています。

 

美郷町における栽培品目

キキョウ、カンゾウ、ノイバラ、センブリ、ホオノキ
太字は出荷実績あり)

 

安定した種苗生産への取り組み

美郷町では種苗の安定供給、および生薬生産に適した系統の確保に注力しています。たとえばキキョウにおいて播種用土の種類、育苗ポットの高さなどの諸条件を変えながら最適な育苗条件を検討しており、またノイバラにおいては局方に適合しつつトゲが少なく安全に作業できる系統の挿し木繁殖を手掛けています。カンゾウではグリチルリチン含量3%を超える優良な系統を見出して、種苗の安定生産に取り組んでいます。


播種後約30日のキキョウ苗


系統選抜しているカンゾウ

 

α-キトサン抽出技術の研究

美郷町では東京生薬協会と共同で、2018年よりエリオケイル属(モクズガニ属)チュウゴクモクズガニ Eriocheir sinensis(流通名:上海蟹)を用いた学術研究も進めています。
3カ年計画でチュウゴクモクズガニの飼養技術と脱皮殻からのα-キトサンの効率的な抽出方法を開発するもので、動物生薬や医薬、化粧品、繊維、食品、農業等、各分野へ応用されるキチン・キトサンの需要増大を見据えた研究です。


チュウゴクモクズガニ学術研究飼養施設


生育中のチュウゴクモクズガニ
(左:♀ 右:♂)

学術研究飼養施設は美郷町千屋地区の山あいに位置し、美郷町の特色である豊富な湧水を活用しています。
特定外来生物である本種の飼養に際しては、環境省東北地方環境事務所による図面確認及び現地確認を経て飼養許可を受けております。また施設は積雪にも耐える強固な覆いを備え、原則毎日巡視を行い、万全のカニ逸出等防止策を講じた上で研究を進めています。

 

薬樹の森づくり

美郷町に広がる山林には薬用植物として重要な樹木も生育しています。この環境を活かし、美郷町とNPO法人みさぽーとの主催による【薬樹の森づくり活動植樹事業】が毎年継続的に行われています。 植樹事業では、東京生薬協会栽培指導員による薬樹の講義を行い、地元高校生や町の方々の参加の下で毎年100-200本程度のホオノキ苗を、遥かに鳥海山を望む町有地の斜面へ植樹しています。


植樹事業(2019年6月)


植樹後5年経過したホオノキ

2014年の初回事業で植樹されたホオノキは既に見上げるまでに成長し、元スキーゲレンデの斜面は緑の森へと変化を遂げつつあります。樹皮が生薬(コウボク)として利用可能になるには20年程度は必要であり、未来を見通した息の長い活動が期待されます。

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